【着衣着火の恐怖】焚き火好きキャンパーなら知っておくべき対処法

キャンプ・コラム
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キャンプ中に発生する事故って、色々なものがあります。
ガスなどの取り扱いを誤って家事になったり、刃物の取り扱いを誤って怪我をしたり、動物からの被害を受けることだってあります。
その中でも発生頻度の高い事故の中の一つに「着衣着火」というのがあるのをご存知でしょうか。

着衣着火ってなに?

1 火災原因の上位には焚火が!
総務省消防庁の令和2年度の消防統計(火災統計)によると、火災原因の第2位が「焚き火」となっており、年間430件もの火災(うち死亡事案23件)が発生しています。
焚き火を原因、とは言っても、その原因は様々なのですが、今回はキャンプでの焚き火や調理中に発生しやすい「着衣着火」にフォーカスし、その危険性や対策などを考えていきます。

2 そもそも「着衣着火」ってなに?
「着衣着火」とは、読んで字のごとく、「着ている服に着火してしまうこと」なのですが、これによって大やけどを負ったり、火災のきっかけとなったりしてしまう事故です。
着衣着火は、ベテランキャンパーであっても、ちょっとした油断で発生しかねない身近な事故と言われていることから、キャンパーとして着衣着火を発生させないために気をつけておくべき事項と、万が一、着衣着火が発生してしまった場合の対処法をきちんと理解しておく必要があります。

焚き火中の着衣着火は意外と多い

先ほどの総務省消防庁の統計によると、ここ数年連続で毎年100件前後、焚き火中の着衣着火による死亡事故が発生しているという驚きの実態があるそうです。
この数字は、消防庁が把握した統計上の数字なので、実際のところは「消防のお世話にならなかった事故」や「軽症で済んだ事故」などが算入されていない可能性が高いです。
そのため、統計には表れなかった小規模な事故件数を加えると、おそらくとんでもない発生件数になることは容易に想像できます。

着衣着火が起きる原因

それでは、そもそも「着衣着火」が発生する根本的な原因について考えてみます。

1 家庭内での一般的な原因
一般家庭において、着衣着火が最も発生しやすいケースとは・・・
ガスレンジに点火した状態のままガスレンジの奥に置いてある食用油や調味料に手をかけたとき、服の袖などに着火してしまう…というケースだそうです。
みなさんも、ガスレンジの周りに調味料や食用油が置かれていないでしょうか?ついつい…ガスレンジに点火した状態で調味料を手にしていないでしょうか?
自分自身、「着衣着火」の危険を気にせずに調理をしていたと反省しているところです。
では、これがキャンプ場での焚き火だとどうでしょうか。

2 焚き火特有の原因
焚き火の場合は、一般家庭のガスレンジ周りとは周囲の環境など大きく異なっています。
まず、焚き火の場合は、ガスの炎と違い、大きな炎が上がります
そして、その熱量は、周囲の温度を上げるくらい高いものになっています。
それだけでも着衣着火が発生する可能性が高くなります。
また、ゲル状の着火剤を使用される方もいると思いますが、この着火剤が衣服に飛び散って付着していたとしたら、どうでしょうか?
おそらく、何かの拍子で着衣着火が発生する可能性が高くなることが容易に想像できます。
さらに、一般家庭でガスコンロを使用する際は、立ち上がった姿勢で料理をすることがほとんどだと思いますが、焚き火の場合は、ほとんどの方が椅子に座ったまま火の管理と調理をしています。
そうなると、炎の高さと腕の高さ(袖の位置)が近くなることや、前のめりの姿勢で火を扱うことになるので、必然的に炎と衣服の距離が狭まりやすくなるので、着衣着火が発生しやすい環になってしまいます。さらに、座ったままギアを探したり、ギアを手に取って無理な姿勢で作業をすることが多くなるため、どうしても炎との距離などの意識が離れてしまい、ついつい炎に衣服が近づき、やがて引火してしまう…ということが想定されます。
「そんなこと、実際にはそうそう起きないよ!」と思われるかもしれませんが、みなさんの中にも焚き火をしていて「服に穴が空いた」という経験のある方が多いと思います。
つまり焚き火から舞い上がった「火の粉」が衣服に付着し、衣服が小さく燃えて穴が空いたということです。
これは、たまたま「大きく発火しなかった」ために大事には至らなかったと言い換えることもできます。
このような理由から、特に焚き火中においては、家庭生活の場面と比較しても、着衣着火が発生しやすい環境にあるといえるため、普段よりも一層の注意が必要になります。

表面フラッシュ現象にも注意

「着衣着火に気をつけろ!と言われても…炎が服にかからないように気をつければいいんでしょ!」
と思う方が多いのではないでしょうか?
実は、衣服に炎がかからなくても簡単に発火してしまうのです。
このような現象を「表面フラッシュ現象」といいます。
そのメカニズムなど科学的な理由はさておき、炎が衣服にかからなくても、炎により高温になった衣服が発火してしまう現象なのですが、特にフリース素材などの起毛の生地で表面フラッシュ現象が起こりやすく、およそ1~2秒で着火し、その炎が一気に広がるという特性があります。
そのため、特に焚き火中は、炎の大きさが大きくなりがちなため、その高い熱量から炎の周囲の温度が急激に上昇するため、表面フラッシュ現象が発生しやすい環境が整っていると考えたほうがいいでしょう。

【対策1】着衣着火が発生しないように

1 不必要に炎を大きくしない
キャンプ初心者の方に多いのですが、焚き火をすると、ついつい炎を大きくしがちです。
「苦労して薪に着火させたけど、もしかしたら炎が消えてしまうのではないか!」と思って、ホイホイと薪をくべていき、それが原因となって炎を大きくしがちです。
炎が大きくなればなるほど着衣着火の発生確率が上がりますし、注意しなければならないポイントが増えます。
必ず「薪は、コントロール可能な炎の大きさを考えながらくべる」ということを念頭に焚き火をしましょう。

2 衣服の素材を確認
最も恐ろしい「表面フラッシュ現象」が発生しやすい綿やレーヨンなどの素材の服を着て焚き火をしないようにしましょう(インナーとして着用するなど工夫をしましょう。)。
難燃性の素材で作られた焚き火エプロンを利用するのも良いと思います。
ただし、袖まではエプロンでカバーできないので、難燃性の上着を羽織ったり、アームカバーやエプロンなど防炎製品を使用するなどの対策が必要になります。
また、靴も難燃性素材のものが好ましいです。
やはり、靴も上着以上に火の粉がかかりやすい部分の一つですし、燃えていることに気が付きにくい部分であることや、炎は上に上がる特性があるので、靴が燃えるとズボンや上着にまで燃え移りやすい部位でもあるため、ぜひ対策を行っておきたいところです。
さらに、焚き火中や調理中は、マフラー、ストールなどは外すようにしたほうが安全です。

3 バケツに水を汲んでおく
念の為の対応ですが、バケツに水を汲んでおくことをオススメします。
それほど大量の水も必要ないと思いますし、大きなバケツも必要ないと思いますが、最低限、初期消火が可能な分の水は用意しておきましょう。
万が一、着衣着火が発生したときは水を掛けて対応することができますし、水を使わなかった場合は、洗い物に使っても良いので、水が無駄になることもありません。
今は、小型で折り畳めるバケツもたくさん売られていますので、さほど荷物も増えません。
ぜひ用意しておきましょう。

4 焚き火の近くに可燃物を置かない
これは、着衣着火の防止というよりも、焚き火による火災を防止するために必要なことなのですが、絶対に焚き火の近くにガス缶や灯油などの可燃物は置かないようにしましょう。
昨年発生した火災においても、気温の低下とともにカセットコンロの火がつかなくなり、CB缶を温めようと火気の近くにおいて温めていたところ、熱によりCB缶が爆発するという残念な事故が発生しています。
知識不足やちょっとした気の緩みから、たくさんの事故が発生していますので気をつけたいですね。

5 焚き火の後始末は完璧に
これも着衣着火の防止というよりは、焚き火による火災防止全般のお話ですが、焚き火を楽しんだ後、きちんと消火を確認してから就寝していますか?
消火したつもりだと思っていても、ちょっと風が吹いただけで再び燃え上がることがありますし、その炎から発生した火の粉が風で飛び、これが原因で山火事になることもあります。
一度くべた薪は、できる限り燃やし尽くし、残った熾火は火消し壷などで確実に消火しましょう。

【対策2】どんな服装で焚き火をすればよいのか?

1 焚き火に向かない素材について
表面フラッシュ現象を避けるためには、レーヨン、ネル、パイル、フリース、ポリエステルの素材を使用したアウターは避けたほうがよいのですが、これらの素材って、着心地が良くて温かいんですよね。
そのため、これらの素材を使用した衣服を着る場合は、インナーとして着用することをオススメします。

2 ウール素材は意外と良い
消費生活センターの調べでは、ウールは一般的に燃えにくい素材とされているそうです。
ウール素材は、暖かくて機能的なので、アウトドアとの相性がいいので、是非取り入れてみたいですね。
ちなみに、ウールは難燃性でありながら、もし着火してしまったとしても消火しやすいという特性があるほか、燃えると独特の匂いが発生するため、例えば、自分の背中から着衣着火が発生したとしても匂いで気がつくことができます。

3 アウターは難燃素材で作られたものを
着衣着火対策として有効なのが、何年生素材を使用したアウターを着用することです。
冬キャンプでダウンジャケットを着て焚き火をしたことがある方も多いと思いますが、火の粉が飛んできただけで簡単に穴が開いてしまって、せっかくのダウンジャケットを台無しにしてしまった人も多いと思います。
ダウンジャケットのようなポリエステル製のアウターは、避けたほうが無難です。
アウターを選ぶ際は難燃性や防炎性に優れたものを購入するのをオススメいたします。
ただし、難燃性があるといっても、絶対に燃えないとは言えません。
あくまで燃えにくい素材であるということを念頭におく必要があります。

4 靴も難燃性が良い
意外と火の粉の被害を受けるのが靴です。
火の粉が足の甲の部分に乗っていることが多いです。
万が一、燃えてきた場合、靴は厚さがあるので、足に熱を感じるまでかなり時間がかかるので、場合によっては着衣着火に気が付かないことも考えられます。
特に冬場の「もこもこ」が付いた靴は要注意です。

5 難燃性エプロンは1枚あると便利
難燃性の焚火エプロンがあれば、季節を問わず使用できますし、着脱が簡単ですのでとても重宝します。
さらに、テント設営時や調理の時なども活躍してくれますよ。

【対応1】着衣着火が発生してしまった際の対処法

1 着衣着火の発生に早く気づく
着衣着火が発生してしまったのに、当の本人が気が付いていなければ対応ができませんので、早く気が付くことが重要なのですが、意外と気が付かない(気が付けない)ものなのです。
着衣に着火したときには、いつもと違う匂いがしたり、着火した部分に熱を感じるので、その異変に早く気がつくことが重要です。
寒い季節は、たくさんの服を着込むことが多いので、着火した際に熱を感じにくくなることから、十分な注意が必要です。

2 素早く脱ぐ
着火した着衣が素早く脱げる服ならば、すぐに脱いでしまいましょう
素早く脱げるかどうかによって、重篤な火傷を負ってしまうか、軽い火傷で済むか、大きな分岐点になることもあります。

3 叩く
小さな炎であれば、着火した部分を叩くことによって消火することができる場合があります。
着衣着火が発生し、あせっている場面での見極めは困難な場合もありますが、叩いて消火できそうなら、有効な手段です。

4 水分を掛ける
近くに水道があれば、すぐに水を掛けて消火できるのですが、なかなか手元に水がないことが多いと思います。
そんなときは、飲みかけのお茶などの飲み物やペットボトル飲料など、水分なら何でもいいので、とにかく掛けて消火しましょう。
また、先ほど説明した「叩いて消火した場合」も、念のため、水を掛けて確実に消火しておきましょう。
ちなみに、焚き火中、自分の手元付近に「消火に使えそうな水分があるかどうか」って、慌てているときにはなかなか気が付きにくいですから、焚き火中や調理中には、バケツなどに水を汲んでおく習慣を身に着けておくことが重要だと思います。
これを機会にバケツをキャンプギアとして装備してみませんか?

【対応2】「STOP ! DROP&ROLL(ストップ!ドロップ&ロール)」による対処法を覚えておく

着衣着火が発生したものの、とっさに「燃えている衣服を脱ぐ」「水をかける」などの行動も、実際に難しい場面が多いです。
そして対応が遅れることで、炎が大きくなってしまうこともあります。
そんなときに覚えておいたほうがいいのが、「ストップ!ドロップ&ロール!」(止まる・倒れる・転がる)という方法です。

1 ストップ!(止まる)
慌てて走り回ると火の勢いが大きくなってしまい、大変危険です。
まずは、落ち着いてその場に立ち止まり、火の勢いを大きくさせないようにしましょう。

2 ドロップ!(倒れる)
燃えている部分を確認し、その場に倒れこみましょう。
炎は、上に上に上がっていく特性がありますが、倒れこむことで、頭部への延焼を防ぐことができる効果があります。
そして、燃えている部分を地面に押し付けるようにして体と地面をくっつけます。
そのときは、できるだけ体と地面の間に隙間を作らないことが大切です。
また、両手で顔を覆ってやけどを防ぐのが効果的です。

3 ロール!(転がる)
さらに、地面に倒れたままの上体で、左右に転がります。
転がることで、着衣についた炎を窒息させて消火していきます。

4 消火できたら
もし、やけどを負ってしまった場合には、できるだけ早く流水で冷やしましょう。
そして、必要に応じて救急車を呼ぶ場合であっても、救急隊員が到着するまで流水で冷やし続けることが重要です。

【対応3】キャンプ中の火災全般に言える対処法

さいごは、キャンプ中の火災など全般に言える対処法です。

1 大声で火災の発生を告げる
着衣着火だけでなく、テントやタープ、各種ギアへの延焼などが発生したら、大声で火災の発生を叫ぶことが必要です。
これによって、周囲のキャンパーの力を借りて対処することができますし、場合によっては被害を最小限に食い止めることも可能になります。
一人でできる対処には、限界がありますので、躊躇なく周囲のキャンパーの力を借りましょう

2 完ソロなら装備で補う
完ソロで野営を楽しむキャンパーにとっては、火災全般にも言えることですが、着衣着火への対応は厳しいものがあります。
そのため、着衣着火を発生させない対策と、発生してしまった場合の対応について意識をより高く持っておく必要があります。
難燃性素材を意識した服装やギア選びを徹底することや、バケツと水を必ず用意するなどの対策を徹底すること、そして火の始末を徹底することなどが、とにかく重要です。
ソロキャンプの魅力は一人で楽しむことですが、あらゆるトラブルに一人で対応できるのが、熟練のソロキャンパーなんだと思います。

まとめ

対策と対応策のまとめです。これだけでも覚えておきましょう。
【着衣着火を防止するための対策】
1 難燃性の素材でできた服を着る
2 バケツに水を汲んでおく
【焚き火による火災を防ぐために注意すること】
1 不必要に炎を大きくしない
2 焚き火の近くに可燃物を置かない
3 火の始末は完璧に
【もし着衣着火が発生したら】
1 「STOP ! DROP&ROLL!」
2 周囲の人は、水や飲み物などを掛けて消火する
3 大声で周囲のキャンパーに助けを求める

さいごに

インターネットで「着衣着火」という言葉に偶然出会い、ちょっと気になったので色々と調べてみたのですが、これがキャンプや焚き火に密接に関係していただけでなく、日常生活においても相当危険な事故だということに気が付きました。
そして、着衣着火の根本的な原因について理解が進むと、これまでに自分が行ってきた「火の管理」の不十分さ「防火の意識」が希薄であったこと、着衣着火に対する対策の甘さにも気が付き、深く反省しました。
やはり、一番大切なことは、事故なく楽しいキャンプをすることなんですよね。

では~

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